サウナ!温泉!銭湯! 闘魂 THE ボイラー
   

温浴人最前線 ザ・ボイラー

温泉・サウナ・銭湯・スポーツクラブ…温浴業界の ハートの熱い経営者・運営者様に送る旬の業界人のコラムを掲載。 業界最新動向と未来を語るフリーペーパーです。

 

[プロフィール]
熱波甲子園2017 社会人の部 優勝
熱波アドバイザー/月刊サウナ 制作委員
サウナ皇帝・熱波師 井上 勝正

2009年プロレスラー廃業後、横浜鶴見区にあるスーパー銭湯『ファンタジースパ&サウナ おふろの国』に入社。ロウリュ熱波で日本各地のお客様に熱波と情熱を届ける。また、老若男女を引きつけるその熱きキャラクターで、サウナ熱波以外の子供向けお風呂イベントでも活躍、ライターとしても様々な媒体で執筆。
現在一児の父でもある。

[ブログ]サウナのサウナ皇帝 井上勝正 ロウリュ熱波道&オタクカルチャーブログ
http://ameblo.jp/0455854126

[インターネットラジオ]MasterPieceのぶっ壊レディオ
http://www.girlsvocallive.com/radio/page/master.html


 

それが魂の着火点

<vol.21>

押上温泉 大黒湯 代表
新保 卓也 & 朋子 婦人
   
× 井上 勝正

だから
大黒湯 の
夜は長い

 


京メトロの90周年の「東京銭湯week」と言う企画があって、
その東京の街の文化や歴史を深~く感じられるスペシャル風呂を何地域の何軒かの銭湯で
やってたんですよ、12月上旬まで。

その1つとして 半蔵門線 押上駅 近くの『押上温泉 大黒湯』では
〝江戸切子風呂〟と言うスペシャル風呂だったんだけど

……………切子ってコップかな!?まさか、でかい切子のコップみたいなお風呂になっているのか!?
……………まさかね。

でも 何をやっているのか見たい衝動にかられて ボクは大黒湯に向かったよ。
人気の銭湯だしね!

 

うやら錦糸町の方からも行ける様だけど押上駅から通りに出て
四ツ目通りを錦糸町の方へ歩く事にした。

大黒湯は1949年(昭和24年)創業の歴史ある銭湯で
この辺りの日常をずっと見つめて来たんだろうな。

大黒湯の前に着いた。平日の営業は15時からで まだ少し時間がある。
しかし 何だね、オープン時間直前となると人が集まって来ていますよね。

そして空を見上げれば スカイツリーか!
ボクは写真を何枚も撮ってしまった。
スカイツリーとその手前に大黒湯、画になるんだよ、これが。

そうこうしている内に大黒湯から女性が出てきて
玄関のシャッターを ガラガラ…と、

玄関に集まった人達も皆 大黒湯に入っていく。
今日も大黒湯の1日が始まった様だ。

 

ャッターを開けた女性は 大黒湯若女将の 新保 朋子 さんだ。

若女将
「こんにちは!
東京銭湯weekの〝江戸切子風呂〟を
見ていってください!
男女交代制の脱衣場や同じく
内湯のインテリアを江戸切子テイストで
装飾しています。
浴室には グラスも展示しています。
美しいでしょ。」


……………なーるほどね!
〝 江戸切子風呂〟ってそう言う事だったんだな、

浴室に差し込む傾いた陽の光が展示されている切子のグラスをキラリと輝かせていた。

     

ころで 若女将さん、ボクは大黒湯の前に立った時から ド肝を抜かれたんだ、
あの、『オールナイト銭湯』って…

すると、
「井上さん、それはね、もともと私の夜は長い。と言った事から始まってるんだよ。」

若女将の話を聞いている後ろからボクはその男性の声を聞いた。

若女将
「井上さん、紹介します。主人です。」

大黒湯の三代目 であり 代表 の新保 卓也 さん。

新保
「井上さん、幼い頃に感じた夜って永く感じませんでしたか?
もう永遠なんじゃないか?って思うぐらい…私はね、そんな時代の想いを忘れたくないんです。
それをこの大黒湯でやってやろうと思ったんです。」

今はすぐ過ぎ去る、もう次の瞬間昔になってゆく。
でも ゆっくりと過ぎる夜があっても良いじゃないか、
大黒湯でそんな時間の流れの中に身を置いて ゆっくりお風呂に浸かろうじゃないか。

家である大黒湯に新保 卓也 さんは 、6年前に帰って来た。

新保
「昔はサラリーマンをしてたんです、関東じゃなく関西の方で勤めていました、
そこで社会の仕組みやら様々学びましたね。
で、関東に戻ってリサイクル店を立ち上げました。
それがお陰さまで繁盛しまして何店か展開してたんですけど
ちょうどね、実家で…ええ、まぁ此処大黒湯ですけど父親が病気を患ってしまって
「大黒湯を辞めようか…」って兄弟はいるんですが家族でそう言う話になりつつあったんです。 
で、いろいろ考えたんですけど私が戻ってくる事にしました、…銭湯やろうって。」

そうやって実家である銭湯の 大黒湯に戻ってきた新保さんだったが
その雰囲気に 「え?」と何か変な
「動かない空気」と言うか、大黒湯自体を包む「空気感」と言うのだろうか?

少し違うが 雰囲気 に 似ているのかな、大きな言い方では 活気 なのか?

新保
「もう、そう言ったものの動きが止まっているとしか思えなかった。」

商売を他でやってきた経験のある新保さんだから感じられた。

新保
「人の行き来が作り出す空気の流れ、息遣い、それが もう全く無くなっていた。
まさしく死に体と言った感じです。」

 

の 老舗の銭湯が廃業していく原因、

新保
「私はね、それもあるんじゃないかなぁって思うんですよ、もう何にも動いていない。
…そう、活気のない感じね。
それってね、分かるじゃないですか、入ってきたら、分かりますよ。」

新保さんは
「それも原因にあると思う。
街の銭湯が衰退して廃業していく原因は高齢化や人手不足だけじゃない。」と言う。

新保
「だってね井上さん、気持ちいいハズだよ、銭湯って。
誰でもお風呂入れば気持ちいいって!
なのにお客さんが入りづらい雰囲気を作っちゃってるんだよ。
銭湯に限らずどんな所でも人が来ないってお客さん目線を忘れちゃってるんですよ。
自分だったらどう思うかって気持ちを忘れてる。」

それを痛感した新保さんは2年前手始めに大黒湯を
リニューアルした。
何だかんだで 大黒湯の一部を新しくして
物理的に雰囲気を変えた。
大黒湯の歴史を感じる良いところは残して
人が入って来やすいように改良したのだ。

新保
「井上さん、この脱衣場の梁を見てくださいよ、今じゃこんな木は手に入らないでしょ、すごいよ。」

大黒湯の脱衣場の壁の上部、天井から少し下を見てほしい。
頑丈な柱なんだろうな。

そうしたらどうだ、お客さんもぼつぼつと増えて人の流れが出来てくる。
「大黒湯はやってる。」と街の中で認識される。

新保
「その当時は 大黒湯も普通の銭湯の営業時間だったんですが、
まあ、営業終わって夜風呂に入るわけですよね、
銭湯やってる人ってカラスの行水って言うかチャッチャッと入る人が多いんですよ。
私は風呂好きなんで 夜中にゆっくり入っちゃう。」

新保さんは露天風呂から深夜の空を観る。

下町と言えど都会の空は地上の灯りが眩しいくらいで本来暗い空に浮かぶ真っ黒い雲が光を反射してしまってその巨躯を浮かび上がらせながら夜風を流れる。

昔は 夜がゆっくりと流れて行った。
たくさん考え事もした。
眠れない時はこのまま永遠に夜なんじゃないか?って
思えて闇が怖くなったりした。

ぼーっと出来た。

でも今、現在は違う。時間に追われる様に生活して、
今日を振り返る心の余裕も時間もない…。
後ろばっかり振り向いてもいられないが前ばっかり見ていたって
何か見落としてる事もあるんじゃないか?

心が落とした物に気づいてないんじゃないか?
落とした事に気づいて後で慌てたって遅いんだぞ…

だったら 此処に、大黒湯に
長い夜があっても良いんじゃないか?

大黒湯で 大切なものを思い出してもらえば良いじゃないか! 
ゆっくり朝を迎えてもらえれば良いじゃないか!

…新保さんはそう思った。

お客さんからの意見も聞き、ニーズがあることも分かった。

しかし大黒湯のある墨田区では、銭湯の「朝営業」と言うのは前例が無かった。

新保
「…だから 夜の営業が朝に延びていってしまうと言う事ですよ。
最初から言ってるじゃないですか、だから〝夜〟は 永いって。
朝から営業するって事じゃないですから。」

因みに夜は何時までかの定義はない。

こうして東京23区では歴史上初、
そして 大黒湯 だけの「オールナイト銭湯」は2017年11月に始まったのだ。

特別なイベントではない、毎夜いつでもお風呂に入れる。
毎週火曜の定休日以外で大黒湯の灯がこの街から消える事はない。

 

保さんが気づけば2008年着工のスカイツリーが完成して
それがまた露天風呂から良く見える!

ボクは日の暮れかかる露天風呂からスカイツリーを眺めた。

掴もうとするとそこにあるんじゃないかと錯覚するほどの距離感は
間違いなく浮世離れしていて
そして反論の余地は無くキラキラと輝いていた。

新保
「私はオールナイト銭湯をやめるつもりはありません。
大黒湯から見る夜空には
いつでもそんな思い出を創ることが出来るんです。
誰にも邪魔されることなく、それはお客さん皆のものなんです。」

 

 

新保 卓也さま[プロフィール]
押上温泉 大黒湯 代表取締役
新保 卓也 (しんぼ たくや)

東京都出身 1979年生まれ 

大学卒業後、営業サラリーマン
その後、リサイクルショップ経営
2012年大黒湯入社
2014年大黒湯改装
2017年オールナイトとして営業

釣りとサッカー、水泳が大好き。水泳では世界大会出場経験あり。


[会社概要]
押上温泉 大黒湯
〒130-0003 東京都墨田区横川3-12-14   
TEL:03-3622-6698

[業務内容]
地中の天然鉱物が溶け込んだ弱アルカリ性温泉と、スカイツリーと富士山のペンキ絵を浴室から見上げながら、下町の人情溢れる銭湯でごゆっくりお寛ぎ下さい。スカイツリーから徒歩10分。押上駅から徒歩6分。錦糸町駅から徒歩15分。昔ながらと現代を兼ね備え、どこか懐かしい我が家に帰ってきた様な銭湯を目指しています。

[泉質]弱アルカリ性 メタケイ酸泉

1949年 押上温泉大黒湯創業

[押上温泉 大黒湯]http://www.daikokuyu.com/


新保 朋子さま[プロフィール]
押上温泉 大黒湯 若女将
新保 朋子 (しんぼ ともこ)
東京都出身 1978生まれ

3児の母。突如継ぐ事になり戸惑いながら家族だけで銭湯業をする大変さを痛感。試行錯誤 しながら、いかに楽しく銭湯LIFEを過ごせるか追求中。

[Twitter]@daikoku_yu 。


[バックナンバー ]


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〈vol.1〉 放送作家 柴田健太郎氏 × 井上勝正

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TEL:050-5519-2461
発行: 一般社団法人おふろ元気プロジェクト 理事・林和俊
 〒230-0012 横浜市鶴見区下末吉2-25-23 
制作:(有)オアシス THEボイラー編集部 編集長・鬼塚麻子

 

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